モデルケース、国内部隊との演習
プロローグ

「演習……ですか?」
「そうだ」
質素な内装の小さな部屋ではあるが、見るものが見ればそれは機能を徹底したためのものであると分る様であった。その中でも一際大きな存在である机を挟んで、椅子に腰かけた老人と中年男性が向き合っていた。「晋陽、知っているかね?」
「はい、開発中の最新型WDであると聞き及んでいます」
「その試作が完成したのだがね、天陽とどれほどかけ離れたかを確認するためにテストを行う必要があるらしい」
「それで、その相手をしろと?」
「そういうことだ。まぁ、もっとも、言い出したのは開発部ではなく、うちでもエリートと呼ばれる部隊らしいよ」
老人はそう言いながら一部の資料を男性に差し出した。受け取ってそれをめくり、途端に渋い表情を浮かべる。「エリート様の暇つぶしに動く的になれというのですか?」
「エリート部隊同士では何かと問題があるらしくてね、そこで一番それに近い君たちにということらしいよ」
「ひどい話です」
「まったくだ」
密閉された空間だからこそ許されるくだけたやり取りで、男性はなんとなくここに呼ばれたもう一つの理由を理解した。そしてにやりと口の端を歪める。「確認させていただきたいことが一つ」
「言ってみなさい」
「テストと言うことは、勝っているか劣っているかを確かめるということですね?」
「テストというくらいだから、そういうことだろう」
気付いたか、と老人もにんまりと笑みを浮かべた。「了解しました、172中隊隊長エフナー・フラッシェン以下隊員182名、演習へ参加します」
その鼻っ柱を折ってやると、大きく顔に書いてエフナーは敬礼した。