1

「えー、というわけで、エリート部隊との合同演習が決まりました」

 会議室の端々からうぇーいという気の抜けた返事が返ってくる。演習は大事な訓練だが、彼等にとってしてみれば退屈この上ないのである。

 そもエリートとかいう名前からして気に食わない連中と仲良くしろというのが無理という話である。そんな自分たちと比べたいのかという全てを含めてのうぇーいであった。

 そんな空気はエフナーにも伝わった。思った通りだなぁと苦笑する。まあ、ここから盛り上げてやるのが自分の仕事さと、咳払いを一つ。

「えー、簡単な内容についてだが、晋陽って知ってるな。あれの試作第一段階のテストだそうだ」

 再び響くうぇーいの声。更にテンション下げるようなこと言うなよーというものだ。エフナーもだよなぁと苦笑を浮かべた。だが、ここから挽回だ。  

「まあ待て落ち着け。天陽との比較テストって題目だぞお前ら。しかも言い出しっぺはあいつ等だぞ」

 空気が変わる。姿勢はだれたままだが、目の色が明らかに変わっていた。返答はなかった。その意味に気付く者もいたが、彼等の隊長がそうだと言うまで確定はできないのだ。皆の考えは概ね期待した通りだなと、エフナーが満足そうに笑みを浮かべる。  

「比較した結果天陽なんかに負けるような性能じゃ困るよな?しかも手を抜いたりして変な性能になっても困るよな?」

 もう言外に言ってしまっているようなものだが、まだ皆は反応しない。もういいだろうと、隊長は皆の顔を見渡した。  

「俺が許す。ボッコボコにしてやれ」

 瞬間、怒号が会議室を埋め尽くした。異様な盛り上がりを見せる皆の様子を確認し、今回も大丈夫そうだなとにやけるエフナー。  

「大丈夫そうだな」

 いつの間にか隣に来ていた第4小隊隊長がそれを言葉に表す。エフナーが部隊に配属されて以来、彼の才覚と努力に目を付け鍛え上げてくれた恩人であり、その最大の理解者でもある。心中をわざわざ言葉にして出す必要はないと思うんだけどなとは感じつつ、その言葉に同意するエフナー。  

「ま、一筋縄ではいかないとおもうけど、な」

「どうせどうにかするんだろう?」

 その言葉にニヤリと笑うエフナー。すでに齢40になろうかという中年ではあったがその笑みは若々しく、悪く言えば悪ガキのそれに見えた。  

「まっかせろい」


 <<前へ                      次へ>>