最初にそれに気付いたのは演習場の端を任された班だった。

 センサーの有効範囲の半分まで進んだら停止し、再びセンサーで索敵するという非効率的な進行方法ではあったが、それほど時間をかけずに行程の半分まで辿り着いた。

 それとほぼ同時に、センサーにWDが映り込んだのである。すぐさま身を隠す。機影が確認できたのは通路を形作っているビルの、その一室である。道に向けて銃を構えている形だ。時間を置いて何回か確認してみたが確かに天陽であった。数は2。

「本部、こちら32班。待機中と思われる敵を発見した」

『何か罠が仕掛けられている様子はあるか?』

「何回かセンサーで確認してみたが、家具くらいで……特に怪しい物はない」

『よし、増援に注意しつつ制圧せよ』

「了解」

 通信を終わらせ、もう一度センサーで確認する。敵はこの道を警戒している様子で、まだこちらには気づいていないようだった。

 好機だ。先程仲間がやられた恨みを晴らしてやる。確認がとれるのと同時に、彼らは身を隠しているビルの屋上まで飛び上がった。該当のビルの屋上から進入し、後ろから制圧する。それがプランだった。

 一つ一つビルを飛び越え、その度に周囲を警戒する。何度もセンサーで敵が動いていないことを確認。大丈夫だ、気付かれていない。

 後7つだ。周囲を警戒している内に遠くで同じように飛んでいる班が見えた。同じように待ち伏せしている箇所があるということか。中隊長の言う通り、確かに舐められているかもしれない。

 後5つ。しかしこんなにも上手くいくとは、敵の油断も過ぎたものだと思う。センサーの有効範囲を侮ったのかもしれない。

 後3つ。何にせよ、これで我々が一撃を加えて、それで本当に開戦だ。

 後1つ。次のビルの屋上が目的地だ。敵に感づかれないよう、そっと、何事もないように着地せねば。注意を払って跳躍する。全身のバネと人工筋肉をフルに使い、爪先、膝、腕の順に素早く着地。完全に衝撃を吸収する。完璧だ。音一つ立たなかった。これで後は敵を後ろから……。

 そこまで考えて、彼は違和感に気付いた。体が動かない。隣を見ればバディも同様に着地したままの体勢で地面に貼り付いている。まるで糊でも使われたように。まさか? 慌てて装甲パージのコマンドを検索。実行。

「はーい、残念でしたー」

 最終確認画面が表示されるのと銃が突きつけられたのは、ほぼ同時だった。

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