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 晋陽は一言でいえば、洗練されていた。本来天陽で必要とされた各アタッチメントを全排除。その余剰分に最新の人工筋肉を搭載。天陽とさほど変わらぬフォルムながら各運動性能は桁違いだった。

 センサー及び搭載されているコンピューターも40年も経てば進化する。重力センサーによる策敵範囲は従来のおよそ2倍。

 重力センサーとは『どこでどれだけ重力が働いているか』を関知するものであり、物があるということを関知することに関しては隠匿不可能というものだ。

 万能ではないが、殆ど隠れることができないと言うことは防衛側からすれば驚異と言える。まだ精度が甘く、だいたいそこに人型の物があるかどうか、くらいしか分からないようだが、いずれはそうでなくなるのだろう。

 装甲そのものもコスモスで開発された新素材を使用しており、その耐久性はただの突撃銃では突破が困難と思われるほどであった。

 これだけの能力を備えている上で軽い。早く堅く強い。あくまで歩兵限定ではあるが、驚異的なWDであった。

 いや、これで試作品とか、頭おかしいんじゃねえのか。次にそう思った。いくつか考えてきた策はある。すでに実行している策もある。そのいくつが通用するか考えて、半分くらいかと思案する。

 だが、まあ、十分だろう。再びニヤリと笑って、そう思った。

「ありがとうございます。参考になりました」

 ニヤケた笑みを一度封印して資料を摂政に返却する。その頃には114中隊長もなんとか落ち着いたようで、憮然とした表情ではあったがおとなしく待っていた。

「さて、それでは今度こそ問題はないですか?」

 執政の問いかけに、今度は両者とも肯定の返事をした。大きく頷いて、摂政が再びマイクを持つ。  

「それでは、両部隊所定の位置に移動してください。1100より演習を開始します」


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