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「で、どうだったんですか?相手は」

「強敵だ。マジヤバイ。若造と思っているとヤバイ」

「そこまでですか、あのWDは」

「ああ、中身のボンクラを補ってありあまるくらいヤバイな。あれが手に入ったら歩兵すごいことになるぞ」

 第4小隊の隊長と並んで歩きながら、エフナーはヤバイヤバイと連呼していた。普通これくらいネガティブ発言を繰り返せば士気も落ちようと言うものだが、この中隊は違っていた。その後に何が続くかも知っていたからである。  

「まぁ、そんなヤバイ相手をぶっ潰したら、俺たちもすげえよな」

 ニヤケた笑いを浮かべるエフナー。部下の返事も全く同じ笑みであった。それを確認すると、エフナーは真顔に戻った。  

「総員、配置につけ!想定パターン1、ミーティングと同じだ!」

「イエッサー!」

 即座に散らばっていく部下を見て、嬉しそうに笑うエフナー。さあて、じっくり料理してやるか。舌なめずりしながら自身も本部へと足を向けた。

/ ※ /


 114中隊長は憤慨していた。まったく予定外だった。自分たちよりも何故か評価が高いベテラン部隊。その鼻をあかして自分たちこそが最強であると証明するための、それだけの演習だったはずなのだ。

 そのためには晋陽が必要だった。未知の能力をもって絶望のうちに叩きのめしてやる予定だったのに。すべてが崩れてしまった、くそ。あの時もっと抗議していればよかった。

「くそっ!」

 足下に転がっていた石を蹴り飛ばす。軽く蹴ったつもりであったが、その石は遙か遠くのビルの壁に突き刺さった。その光景を見てはたと気づいた。

 まだ晋陽があるではないか。天陽なんかとは比べ物にならないこの性能があれば、正面から叩き潰すには十分である。笑いが自然と溢れ出た。

「何だ、結局は同じ事じゃないか。我々にかなう部隊が、この国にあるわけないのだから」

 自分がひどく破綻したことを述べているという事をあえて無視して、114中隊長は部下達に向き合った。  

「諸君、我々の力を、彼らに見せつけてやろうではないか!」

 おお! という怒号がその返事であった。そこに、晋陽の力ではないかという疑問を挟む人間は一人もいなかった。

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